ゆらめく火を
なおていです。
また小難しい話です。
先日、音楽の都ウィーンでオペラを見ました。
人生初のオペラでした。
歌はドイツ語、ステージに上に英語のセリフ字幕が流れるのみ。1番後ろの立ち見席で3時間ぶっ通しでしたが、自分でも驚くほどに世界に入り込みました。
そして劇中、ふと「今この場所で、この娯楽を楽しめているのはなんて幸せなことなんだろう」と思いました。
幸運にもヨーロッパに行く機会を掴んだこと、異国で初体験のオペラに行く度胸があったこと、100%ではなくとも劇が楽しめる程度に英語が出来たこと、そして良い芸術に触れて良いと思える心を持っていること。
もちろん全て1人で手に入れたものではありません。しかし、自分の積み上げてきたものであるという矜持もあります。
偶然と必然が重なった上で感じられる喜びであることを噛み締めながら、美しい音楽と華やかな表現に浸っていたのを覚えています。
「現状維持は衰退である」
僕が大学1年の時、3年のサークルの先輩の言葉として聞きました。今ソースを調べてみたら、松下幸之助やらウォルトディズニーやらいろんな人の言葉と出てきて、先輩も受け売りだったのかなぁとか思いましたが。
話が逸れました。思い返すと僕は、この言葉を胸に留めながら、命を燃やし、命を削りながら、ここでは無いどこかへ、前へ前へ進もうと必死でした。満ち足りない何かを埋めるように、それはどこか強迫観念じみたものでもありました。
ウィーンからの帰りの電車の中で、ふと、すこし満たされている自分に気づきました。自分の心の中に、消えそうになりながら暴力的に輝く炎ではなく、穏やかで安定した炎を見ました。
こんな気持ちになったのは記憶にないくらい久しぶりで、困惑した記憶があります。
きっかけは今回の出来事なのか、それとも、札幌に戻ってきて生活が変わったことなのか、僕にはわかりません。それでも、あまり認めたくないですが、少し大人になってしまったのかもしれませんね。
そんなかんじです。